ER 3

まず鼻のあなの奥の方に麻酔薬が噴射され、感覚が鈍くなったところで鼻チューブが挿入されました。

先ほどのナースの説明に従って、飲み込むように、入って来るチューブに逆らわないように努める私。

特に吐く時に注意しゆっくり呼吸をして、体全体をリラックスさせるようにする。緊張して体が強張っていると余計に痛いのです。

 

「とっても上手ね!鼻チューブのチャンピオンになれるわ!」

 
と、嬉しいようなそうでもないような賛辞がべっぴんナースから贈られました。
 
チューブが胃に到達し溜まっていた血液が吸い出されて、チューブの先についた機械にぶら下がっているビニールの袋が半分くらい赤くなるのを見ていた私。チューブが納まるべきところにあるせいか、少し楽になりました。
 
 
 
途中で咳き込んで血が飛び散るのは、結構あることらしいです。
 
そして患者がなにかの感染症にかかっているという可能性を考慮し、ナース達はこの透明バイザーを着用しているのです。というわけで、日々私と各種体液を交換しあっている夫にはこのバイザーは必要ない、ということか。
 
「特に太った人は上手くできないの。気道が狭くなっていて、かつ収縮しやすくなっているから。普通はこの人みたいにキレイにやれる処置じゃないからね。」
 
そうべっぴんナースが研修救急隊員に説明しています。
 私は、なんだか誇らしげな気分でした。 
 
 
 
しかし数十分後、麻酔が切れてきたのか鼻チューブが痛み出しました。
 
チューブを入れた後ナース達はみなどこかに行ってしまい、続いて病院の入院手続き係りの人がやってきて夫は各種の書類にサインをしたり支払いをしています。
 
当然ですが息をするたびに気道には違和感、唾液を飲み込むのもつらく、しかし血はほぼ吸い出されたのかもう出てこず。
 
通常痛みや不快感に強くそれを我慢しがちな私ですが、鼻チューブの感覚にはそれ以上我慢ができませんでした。これを何日も入れている人は、病気で痛い箇所より鼻の痛みでギブアップなんじゃないの。
 
ナース達は忙しげに部屋の外を行ったり来たりしているけれど、なかなか呼び止められません。
運よく、一人が部屋に入って来たので
 
「鼻チューブを抜いて欲しいのだけど」と涙目で聞いてみた。
 
ナースは誰かに確認を取り、チューブを抜いてくれました。
 
チューブを入れるのは時間もかかり辛かったけれど、抜く時の「ずるり」としたあっという間の感触。ああ、スッキリ。
 
これで息ができるよ。