生きろ。(もののけ姫風に)

さて、随分あっさりと

胃がんを告知されてしまった私たち。

昔の日本のドラマでは

がんの告知の際には家族は別室に呼ばれて

「先生、余命はどのくらいでしょうか?

母にはどうか知らせないでください!」

 と、泣き崩れるのがお決まりでしたが

今考えれば自分の命の期限を

本人が知らせられないなんて

ありえない。。。

たとえそれが末期がんであったとしても。

末期がんだったらなおさら。

 

息子は相変わらず

私の隣でゼリーを食べながら

ディズニーの番組を鑑賞中。

私と夫は

動揺を隠しきれずにしばし黙っていました。

 


告知をした胃腸科のドクターは去り、

今度はインド系のドクターが

病室に入ってきました。

 

あ、ここに特筆しますが、

私のドクターやナースの形容は

特に人種や性別や何かを差別、評価しているわけではなく

特徴として覚えている部分で書いているだけでして

そうした方が自身の記録としても、

読んでくださる方へも

混乱が少ないかなと思っているゆえの記述です。

私が入院したのは

かなり大きな病院でしたので

入れ替わり立ち替わり

多くのドクターやナースや技師の方達が

治療に携わってくださいました。

 

 

 

彼女はテレビを見ている息子に目をやり、

「息子さんはおいくつ?

可愛いわねぇ、私も子供が2人いるのよ。」

と世間話をしながら

コンピュータに何かを打ち込んでいます。

 

それが終わると私達の方に向き直りこう言いました。

 

「あなたはがんとわかったけれど、

決して諦めずに頑張りましょう。

こんなに可愛い息子さんのためにも

これから治療を頑張っていきましょう」

 

 

そこで

初めて、涙がでた。

 

 

自分ががんと知った悲しみの涙じゃなく

痛烈に「まだ生きたい」という

シンプルな感情が生まれてきて

こみ上げてきたコントロール不可能な何か。

夫もそっと目を擦り、

ドクターは私の手を強く握ってくれました。

 

そうだ、ボーッとしている場合じゃない。

私の大切な家族のためにも

もう何十年かは死にたくない。

なんならこの小さい息子の結婚式を見たい。

孫の世話だってしたい。

最終的にはがんで死ぬかもしれないけど、

今はまだその時じゃない。

 

 

私はこのドクターに

私の胃がんのステージは何なのか

これからどういう食事をしたらいいのか

何に気をつければいいのか

矢継ぎ早に質問をしました。

 

もしかしたら私が聞いていなかっただけで、

先ほどの告知をして行ったドクターが

説明してくれた事ばかりかもしれないけれど。

 

彼女は

ステージは今の時点ではわからない。

この後担当のOncologist(腫瘍内科医)が来るので、

彼から今後の検査などの説明を受けることになると言うと

病室を去って行きました。